世の中は珠玉だらけ
余談ながら、日本語の「珠玉」についても面白い記事を見つけた。朝日新聞デジタルの「クイズ語エ門 珠玉の……と褒めていいのは?」という記事によれば、「珠玉」という言葉は大きなものや堂々としたものを褒めるときに使えないそうだ。だから「珠玉の大作」という用法はNGで、「珠玉のメロディー」はOKなのだという。褒められる対象が「小さい」ことがポイントだそうで、分厚い長編小説を「珠玉の一編」とは呼べないらしい。
つまり、大きかったり華やかだったりするものは「珠玉」になれないのだ。確かに、英国のオフィスや厨房や保育園などで働くわたしの姿は、英国人の同僚に比べるとフィジカルにも小柄であった。英語のgemと日本語の「珠玉」が百パーセント意味を共有していないとしても、この点もすみやかに納得がいく。
Life is rocky when you're a gem.
そりゃ本人がgemだったら、ライフが山あり谷ありになるのは当然だろう。泥だらけの小石は、勢いよく山道を転がることができるから。
などと長々とぼやいてきたが、実際にはgemというのは「いい人」ぐらいの意味で、とくに目立たない人を褒めるときに便利な言葉だ。この言葉をリーヴィング・カードに書かれている人は多いものである。つまり、世の中は珠玉だらけってわけ。世界は珠玉でできている。
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「母ちゃんは、物事がうまくいってないときに俄然生き生きしてくるね」
福岡の80代父(職人肌)とイギリス人息子(思春期)の謎の意気投合、トラック運転手の夫と福岡の母が同時に重病に――
予想外の事件が舞い込む珠玉な日常を、ガッツと笑いで楽しむ英国在住作家のド根性エッセイ。