1980年10月5日に東京・日本武道館で行われたファイナルコンサートで、「歌い継がれてゆく歌のように」を熱唱する山口百恵さん(写真提供:共同通信社)
音楽プロデューサーとして半世紀以上活躍し、錚々たる大スターたちの楽曲を手掛けてきた酒井政利さんが、16日に心不全で亡くなりました。享年85。百恵さんの「ひと夏の経験」「赤い衝撃」「プレイバックPart2」「いい日旅立ち」などの名曲の数々をプロデュースした酒井さんは、長年の業績を称えられ「文化功労者」にも選出されました。今年、酒井さん自身が、今もなお歌い継がれる昭和歌謡の魅力、スターたちの知られざる一面を語ったインタビューを配信します(構成=丸山あかね)

昭和歌謡が見直されている

2020年の文化功労者に選出され、喜びと同時に驚きに包まれました。一人では達成できない仕事ですから、共に歩んできた同志たちの顔が浮かんできて、感謝の思いでいっぱいです。

アーティストを売り出すためのコンセプトを決め、作詞家や作曲家を選び、レコーディングやプロモーションにかかる予算管理なども含めたすべての責任を負うというのが音楽プロデューサーの仕事なのですが、一般の人は私のことなんて知らないでしょう? ですから「ええっ、本当に?」と。

なんでも選考過程で現在の音楽状況に注目されている方がいて、強く推してくださったのだとか。その背景には、戦後に生まれた昭和歌謡が見直されているという状況もあったと思います。

歌謡曲は高度経済成長期を生きる日本人を時に励まし、時に慰め、夢や希望を与えてきました。私はその一端を担ったに過ぎませんが、情熱を持って半世紀以上やり続けてきたことを評価していただき、このうえなく幸せです。

私が音楽プロデューサーという仕事を通して関わってきた人は、歌手だけでも300人を超えます。関係者も入れると大変な人数になるわけですが、そうした方々のほぼ全員から祝電やメール、お電話などをいただき、嬉しく思いました。ヒット曲というのは、制作に打ち込んだ人たちをも強い絆で結んでくれているものだと。

 

【酒井さんがプロデュースした主なヒット曲】

1964年 「愛と死をみつめて」 青山和子
1971年 「17歳」 南 沙織
       「水色の恋」 天地真理

       「地球はひとつ」 フォーリーブス
1972年 「ひとりじゃないの」 天地真理
       「男の子女の子」 郷ひろみ

1973年 「赤い風船」 浅田美代子
       「としごろ」「青い果実」「禁じられた遊び」山口百恵
       「あなたに夢中」 キャンディーズ
1974年 「ひと夏の経験」 山口百恵
       「よろしく哀愁」 郷ひろみ
1975年 「木綿のハンカチーフ」太田裕美
1976年 「春一番」 キャンディーズ
       「赤い衝撃」 山口百恵
1977年 「ブルドッグ」 フォーリーブス
       「暑中お見舞い申し上げます」 キャンディーズ
       「イミテイション・ゴールド」 山口百恵
1978年 「微笑がえし」 キャンディーズ
       「プレイバックPart2」「いい日旅立ち」  山口百恵
       「林檎殺人事件」 郷ひろみ・樹木希林
       「時間よ止まれ」 矢沢永吉