患者さんの希望とリスク

終末期を迎えたとき、残された日々をどう生きたいかは人によって違います。そしてスタッフは、常に患者さんにとっての最善を、全力でサポートしています。

 

終末期とは、「治療効果が期待できず、予測される死への 対応が必要となった期間」のことです。楽に安らかに過ごしたいのか、一分一秒でも長く生きたいのか、どちらを希望するかで受ける医療が変わってきます。患者さんもご家族も主治医も、死に向き合い、「どのような治療・ケア」を希望するのかを、きちんと話し合っておく必要があります。

その際に忘れてならないのは、できるだけ患者さんが安心して楽に過ごせること、納得できる最期を迎えることだと私は思っています。

つばきさんにとって入浴はなによりの楽しみでした。血圧や室温の変化による体調の急変がありえますが、ご本人の「お風呂に入りたい」という希望を、いかにかなえるかを考えるのも私たち医療従事者の役割です。

訪問入浴のサービスは、自宅で寝たきりでも気持ちよく湯船につかり、体を洗ってもらえます。つばきさんも訪問入浴のたびにゆったりと湯船につかり、好きな歌をスタッフにリクエストして歌ってもらうのを楽しみにしていました。リスクがあることをすべて禁じるのか、患者さんの望みをできる限りかなえるのか。医師としての判断は分かれるでしょうが、私は後者です。

※本稿は、『ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 さいごはおうちで』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。


『ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 さいごはおうちで』(著:永井康徳、マンガ:ミューズワーク(ねこまき)/主婦の友社)

病院ではなく、住み慣れた自宅で安心して最期を迎えるという選択肢があります。いのちの物語マンガ10話とともに『住みなれた自宅でさいごまで生きる』在宅医療について、 たんぽぽ先生が、やさしく丁寧にお話します。