「高いものを売りつけようとして!」
そもそもエアコンは、商品を買っていただくまでが一苦労です。買い替えのサイクルは「10年に一度」と言われますが、私が接客したなかには、軽く15年、20年と使っているお宅が多いようです。しかも買い替えるきっかけは、故障や不具合、家の引っ越しや新築、建て替えなど。新商品が出たからといって買いたくなるわけではありません。
家電を購入する基準は人によってそれぞれで、家族の間の力関係、価値観などが垣間見えます。
先日私が接客したご夫婦は、天井に埋め込むビルトインタイプの商品をお使いでした。「15年経って効きが悪くなってきた、買い替えたい」とご相談を受けましたが、工事費用だけで10万円を超えるとお伝えしたところ、「やっぱり壁掛けタイプにしておけばよかった」と妻が嘆き、夫が「お前が見た目にこだわったからだろう!」と声を荒らげて、目の前で夫婦ゲンカが始まってしまいました。
お子さんが高齢のご両親に買ってあげようと、連れ立って売り場に来られることもあります。しかし、途中から親御さんが「冷房の風は不自然だから、やっぱりこんな高いものはいらない」と言い出し、険悪な雰囲気に。フォローしようと「息子さんはお優しいですね」などと言おうものなら、「そうやって高いものを売りつけようとして!」とにらまれる始末。
オンオフを繰り返すよりも、ずっと運転させているほうが安上がりなのに、電気代がかかるという思いこみから冷房をつけずに我慢し、熱中症で亡くなられた方のニュースを見ると胸が痛みます。ご高齢の方には「暑いと感じていなくても、エアコンはつけるようにしてくださいね」と必ず言うようにしています。