「自分の演技の写真や映像を見るとヘコむけれど、次の課題が見えてくるから、『ここをこうしよう』と、さらに肉体改造への意欲がわきます。」(市毛さん)

ひとつ始めると趣味が数珠つなぎに

加藤 ダンスを通して、人とのつながり、興味も広がりますしね。最近、親しくなったのが料理愛好家で衆議院議員を務めたこともある藤野真紀子さん。70歳でスクールに体験に来て、その場で入会。始めて日は浅いのに、パーティで激しいジャイブを踊っていらして、それが素晴らしい。彼女は2年前からシャンソンも習っていて、それに刺激を受けた私は、彼女のシャンソンの先生についてボイストレーニングを始めたんですよ。

市毛 ひとつ何かをやり始めると、別の趣味を持つお友だちがあらわれ、誘われてやっていると、また別の友だちが新たに……と、数珠つなぎになりますね。私もダンスを続けながら、あちこちの扉を開けているところです。

加藤 妻がイキイキしている姿を見るのは夫も嬉しいみたい。うちの夫は料理好きで、私がダンスで留守にしても、自分で食事を作ります。ただ、片付けはしない。うちに帰って汚れた食器を見ると、「うわぁ」となるけれど、「料理、自分でしてくれてありがとう」と言って、片付けは私がやります。やりたいことをやらせてくれていることに感謝しているから、自分もやるべきことをきちんとやらなきゃ、と思うんですよ。

市毛 気持ちに余裕ができますね。うちの母は13年間の介護ののち、4年前に100歳で亡くなったんですが、さっきもお話ししたように、介護の日々のなかで、私、うつ状態になったんですね。「あなたを心地よくさせるために、私はこんなに大変なのよ」「あなたのせいで私の人生は」と、つい恨みがましくなるし、それが口に出ることも。でも、わずか25分のダンスレッスンでも、体を動かして気分が晴れると、デイサービスから帰ってきた母に優しくできたんです。

加藤 自分が満たされているから、人にも優しくできる。ダンスは、体の変化もありますけど、気持ちの面での影響も大きいですね。

市毛 ダンスがなかったら介護を続けられていなかったかもしれない、と思うほど支えられました。

加藤 自分が楽しいと思うことを見つけられたのは、幸せなこと。そのためにも大事なのは「挑戦する」ことを忘れない気持ち。どんなことでもいい。何かに触発されたら、まずやってみる。合わなければ、やめればいい。「もうトシだから」という言い訳はなしね。

市毛 それ、禁句です。

加藤 目標はダンスを100歳まで続けること。あと25年もあるのよ。

市毛 私はどうでしょうか……。80代の先輩方が楽しそうに踊ってらっしゃるんですもの。そこまではいきたいですね。