イラスト:飛田冬子
境遇や年齢が似ている。かといって、共感や親愛の情を示すと、決まって別の感情を持ち出してくるのだ──。静岡県で介護職に従事する都築祥子さん(仮名・64歳)は、家族の墓を世話してくれた石材店の営業マンとメル友としていい関係を保っていたが、彼のメールの内容に変化が表れて…

墓掃除を手伝ってくれるマメなサービス

夫が病死した翌年、お墓を作る話が持ち上がり、私は展示場へ見学に出かけた。その時はお墓を決めきれなかったが、石材店の営業のAさんが駅まで車で送ってくれるという。聞けばAさんの担当地区はわが家のエリア。石の見積もりをお願いし、子どもたちと相談した結果、この石材店に頼むことになった。

当時の私は仕事をしつつ、義理の両親の介護もあり、大忙し。Aさんは、わが家へ御用聞きさながらにやって来ては、墓作りの相談に応じてくれた。墓石選びや文字のデザインなど、わが家に合ったものを誠実に提案してくれる。とてもありがたかった。

建立後も、新盆やお彼岸の折に「お墓掃除に行きましょう」と連絡をくれ、掃除を手伝ってくれて大助かり。私が出向けない時に「持ち場のお墓はみな責任がありますんで」と、墓のメンテナンスをしてくれたこともあった。その分サービス料を請求するわけでもない。

義父が2年後、義母が5年後に亡くなった時も、当然のごとく私はAさんに連絡を取って、お墓を世話してもらうことに。義母の時には以前の石材店を辞め、墓のコーディネートをする会社を一人で経営していた。ならばかえってこちらの希望を言いやすい。

向こうにとってはビジネスだが、こちらのお願いは家族のプライベートなことである。私はメールについつい自分の話も盛り込んでしまう。Aさんの返信メールの文面はこちらの事情に踏み込まないながらも、気づかいを感じさせるものだった。