食事やカラオケに行くようになり…

学生時代から女友達には恵まれてきたため、数年前までは、この調子で男友達も作れる気分でいた。だが男友達を作るのは難しいものだ。知り合ってすぐは気軽なお喋りを楽しんでいるように見えても、3、4回会ううち、次の段階を望んでくる。それが男たるものなのか。

気配を感じた途端、私は「この人も友達のままでは不満なのか」とあきらめ、ご縁はそこまで。そんな経験が何度かある。

Aさんは、その中に入る人ではなかった。家族の墓の世話を3度頼み、かれこれ5年以上連絡を取り合っている。だがお墓の相談に乗ってくれる時、ビジネスライクな感じは最初からしなかった。

Aさんへのメールの一文に近況を入れることが日常化し、電話でも自分の話をする機会が増えていく。当時接客業に転職したばかりの私は、人間関係に悩んでいることなども話すようになっていた。くだけたお喋りが増えてくると、お互い職場の愚痴を言い合うことも多くなり、Aさんも仕事で悩んでいたことを知る。

時には食事やカラオケなどに誘ったり誘われたりと出かけるようになった。カラオケに行くと、Aさんのセレクトする歌はだいたい私も知っていて、同い年であることがわかり、ますます意気投合するのだ。

私にとって気のおけない「男友達」。そう思い、この絆を私は大切にしたかった。