乳がん検診は虫の知らせかも

とりあえず糖質を制限した食生活は中止して、体力を回復しようと思い立ったとき、ふと目に留まったのが、自治体から送られてきた乳がん検診のクーポン券だった。

「5年ぶりに受けてみようかな、と思い立ちました。コロナ禍で受診する人は減っていると聞いていたけど、虫の知らせでしょうか、今の自分には必要だと思えて」

今年1月に受けたマンモグラフィー検査で、左乳房に複数のしこりが見つかった。夏場以降の不調はこのせいだったのかも、とナツミさんは驚きとともに受け止める。

「近くの大学病院で詳しい検査をして、乳がんの診断が下ったのが3月のこと。翌月には、術前の抗がん剤治療が始まりました」

乳がんはリンパを通じて全身に広がることが多いことから、「全身がん」とも言う。全身に腫瘍が散っていることを前提に、まず女性ホルモンの影響の有無や遺伝子検査をしてから治療法が検討される。ナツミさんの場合は、ホルモン療法、分子標的薬、抗がん剤に加えて左乳房の全摘手術を行うことが決まった。

「今は、3週間に1度の間隔で抗がん剤の投与を受けています。投与後の10日間は起き上がれないほど体がつらくて、あとの10日で日常生活を送る、の繰り返し。もう3クール残っていますが、抗がん剤で腫瘍が消えたように見えても、全摘手術は必須。長い闘病生活になることを覚悟しています」

夏バテだと放置してしまったことは悔やまれるが、不調が明らかだったおかげで乳がん検診を受ける気になった。今では、前向きに捉えているという。

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お話を聞いた3人の病が発覚したきっかけはさまざまだが、共通していたのは「自分で勝手に判断しない」という教訓を得ていたことだ。気のせいだとやり過ごしたり後回しにしたりせず、体からのサインに素直に向き合うことが何より大切だと教えられた。

 


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