孤独死に備えるべきなのは、後を託す子がいない人ばかりではありません。超高齢社会では、子どもや甥、姪に先立たれることもありえます。身内がいなくなったら、死後の事務手続きや葬儀の手配を誰にお願いすればよいのでしょうか。自身の最期と没後について今から考えておくべきことを、2回に分けて終活研究の第一人者である小谷みどりさんが解説します。第2回は葬儀や墓はどうすればいいのか。さらに、「ひとり終活」の心構えを聞きました

〈第1回はこちら
「『任意後見契約』『任意代理契約』『死後事務委任契約』とは?」

葬儀のやり方は変わっていく

「死後事務委任契約」によって、自分が理想とする葬儀を執り行ってもらうことは可能ですし、葬儀社と葬儀の「生前契約」を結んでおくという方法もありますが、時代の流れとともに、葬儀のありようや参列者の数は変わっていきます。

参列者について公正取引委員会が2005年に全国の葬儀業者に調査したところ、「5年前に比べて参列者が減少した」と回答した業者は、67・8%。それが16年の調査では、86・8%にまで増加しました。参列者減少の最大の要因は、死亡年齢の高齢化にあります。高齢になるほど、きょうだいや友人も亡くなっていきますから、当然のことです。

ご自分の葬儀について不安に思う方に、私はいつも、「もしもあなたが今日死んだら、何人が葬儀に来ますか?」と問いかけることにしています。たとえば定年退職から間もない方の場合、家族や親戚、友人を入れて50人だと仮定しましょう。10年後には何人になるでしょうか? 高齢の親族が亡くなったり、友達が先立ったりすることもありますから、増えることはないはずです。

つまり、定年退職をした人であれば、今日死んだ場合が一番盛大で、その規模は日に日に小さくなります。小規模の葬儀なら何百万円もかかるわけがありません。私からすれば、葬儀の生前契約はいわば不安を煽る終活ビジネスであり、不要だと思えます。今日死んだとしたらいくらぐらい費用がかかるのか、葬儀社で見積もりを取っておけば安心です。

お墓については、子孫へ継承する必要のない「永代供養墓」や公営の「共同墓」、仲間との共同のお墓、散骨などを検討し、事前に予約をしておくとよいでしょう。