【3】「失火責任法」とは

失火責任法をご存じでしょうか? 明治32年に民法第709条に制定された法律で、正式には「失火ノ責任ニ関スル法律」といいます。

「失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」とあります。

現代風に言い換えれば、「自宅が火元となって近隣が類焼しても、失火責任法により、〈重大な過失がなければ〉近隣への損害賠償はしなくていい」と定められています。以来120年以上、変わることなく、法律は存続しています。

ちなみに、この法律が制定された当時、木造住宅が主流で、大都市は密集していることもあり、大規模火災の可能性も多々ありました。

高齢の方は「火元は七代祟る」ということわざをご存じの方も多いのですが、ウィッキペディアによると、江戸時代に武士などにはおとがめはなく、町人の失火に対しては、享保2年(1717年)の『御定書百箇条』で小間10間(約18メートル)以上焼失の場合、火元が10日・20日・30日の押込と定めました。押込とは、一定期間座敷牢などに幽閉・謹慎することです。

このため、明治になっても出火の責任を問われる風潮にあったのですが、「いつ、だれが火元になっても不思議ではない。さすがに類焼の被害まで問うのは厳しすぎる」との世相も根深く、制定したようです。