がんで困ったときに利用できる公的制度


1. 医療費が高くて困ったら

公的医療保険には「高額療養費制度」という助成制度があります。1ヵ月に支払う医療費が一定額を超えると、超えた金額が払い戻されるのです。

年収600万円(窓口負担3割)の人の自己負担限度額は、8万100円+α(総医療費によって上乗せ)。計算方法は省きますが、たとえば1ヵ月の医療費を30万円支払ったとしても、実際の負担額は8万7430円。残りの21万2570円は、申請すれば戻ってくるのです。

医療費には処方された薬代も含まれますし、同じ世帯の被保険者にあたる家族の分も合算できます。ただし各々の自己負担額が2万1000円以上の場合のみ(70歳以上は金額の制限なし)となります。

高額療養費を受けるには、いくつか注意点があります。(1)申請から払い戻しまでに3ヵ月程度かかること。(2)保険診療のみが対象。入院時の差額ベッド代、食事代、先進医療は対象になりません。(3)入院と外来、医科と歯科は同じ月でも合算できない。(4)月ごとの合計額に応じるため、月をまたいで入院した場合は費用が分散されて助成対象外になることも。

あとから戻ってくるとはいえ、何十万円といった医療費を準備するのが大変という場合は、あらかじめ「限度額適用認定証」を申請しておくのがおすすめ。これを病院に提出すれば、窓口での支払いが自己負担限度額までですみます。

 

2. 治療で休職したときは

仕事を持っている人は、治療のため休職せざるをえない状況になることもあるでしょう。がんに限らず、病気やけがで働けず給与などが支給されない場合、会社員や公務員であれば「傷病手当金」が1年6ヵ月支給されます。金額は日給の約3分の2。

傷病手当は「一疾病一給付」なので、過去に別の傷病で受給していても、あらためて支給されます。また、がんが完治して仕事に復帰した後にがんが再発した場合も、社会的治癒と認められれば支給されます。

 

3. やむなく退職したら

会社を辞めたときにハローワークで給付される失業保険のことは、みなさんご存じでしょう。正式名称は雇用保険の「基本手当」。がんで離職した場合も受給できます。

ただし、「労働の意思および能力があること」が大前提なので、治療中で働けない場合は認定されません。ですから、すぐに働けない場合は、受給期間延長の手続きをしておきましょう。原則として、基本手当の受給期間は離職日の翌日から1年間ですが、継続して30日以上就業できない場合、最大で4年間まで延長できるのです。

なお、前述の傷病手当は一定の要件を満たせば退職後も受給できますが、基本手当との併給はできません。