がんになったら心配になるのがお金のこと。治療の経済的負担をカバーする公的制度を紹介します。困っていることや目的別に利用できる制度を探しましょう。自身も乳がんの診断を受けた経験のある黒田尚子さんが解説します

治療は長期化、高額化しています

がんになると、手術や治療費などでお金がどんどん出ていくものですが、日本には健康保険や年金などの社会保障制度があり、経済的負担をかなり軽減してくれます。しかし、公的制度の利用は基本的にセルフサービス。原則として、自分から動いて申請しない限りは支給されません。

9年前に乳がんを宣告された私は、いろいろな公的制度を調べました。どれも仕組みが複雑で、手続き先や窓口はバラバラ。がんになってただでさえつらいのに、こんなに面倒では利用しづらいと感じました。実際、使える制度があるのに、申請できることすら知らない方も少なくないようです。がんを経験したファイナンシャルプランナーとして、罹患者にもそうでない人にも知っておいてほしい、がんにかかるお金やそれをカバーする制度についてお伝えします。

がん治療にかかる費用の自己負担額は、年間平均100万円ぐらいと言われていますが、がんの種類や進行度、治療法によって個人差が大きいものです。早期のがんであれば50万円ほどで収まるケースも。また、後述する「高額療養費制度」や「医療費控除」を受ければ実質的な負担額を抑えることができます。

とはいえ、手術をして退院したあとも、再発を予防する治療や定期検査などに費用がかかります。私も、再発予防のためのホルモン療法を2年間行いました。

近年の傾向として、40代の働き盛りの罹患者が増えたことと、医学の進歩によって生存率が高くなったことで治療は長期化。また、体への負担が少ない新しい治療法や薬が開発され、患者にとっては選択肢が増えて喜ばしいことなのですが、新しい治療はそれなりに高価で、がんの医療費は高額化しています。

がんになると病院に支払う以外にも結構お金がかかります。通院治療の際、体調を考えて往復にタクシーを利用したりすれば、交通費も思いのほかかかるもの。

また再発リスクを防ぐために、健康食品やサプリメント、有機野菜など食べ物や飲み物にこだわる人もいますが、継続購入すれば出費はかさみます。

また、抗がん剤治療の副作用で脱毛したときのウィッグ、乳がんで乳房を全摘出した際の専用下着など、必要なものはいろいろあります。