「何か心に引っかかったり思いついたりした時には、すぐスマホのメモ帳に残しておきます。」(原田さん)

見ること、感じること

原田 『いろいろ』には小説が一篇収められていますね。エッセイとはまた違いましたか?

上白石 エッセイは日記のように書いたのですが、小説は、なんでこんなに難しいんだ、作家さんってやっぱりすごいと思いながら書きました。

原田 登場人物が無理に泣いていたら涙がとまらなくなる、作り笑いをしていたら口角が下がらなくなる……、という着想がおもしろい。私にはちょっと思いつかない。

上白石 『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』はどんなところから着想を得たんでしょうか。

原田 大学生くらいの女の子が「うちのおかんの小包見て。すごいダサいの」というつぶやきとともにSNSにあげていた画像を見てびっくりしちゃって。確かにダサくて、私の祖母が母宛に送ってきた小包とあまり変わらなかった。昔も今も母の小包は同じようにダサい。なんでだろう? と思ったことが始まりですね。

上白石 題材を見つけるために常にアンテナを張っていらっしゃるんでしょうか。

原田 何か心に引っかかったり思いついたりした時には、すぐスマホのメモ帳に残しておきます。

上白石 この小説には各地の郷土料理やお菓子がたくさん出てきます。岩手のビスケットの天ぷらとか、めちゃくちゃ気になるんですけど(笑)、それぞれの土地に足を運んでいるんですか。

原田 作品の中に出てくる北海道には3年くらい住んでいたことがあります。想像で書くこともあるけど、たいていは取材で行ったことがある場所を書きますね。大阪やシンガポールに住んでいた経験も、書く時に生きてくることが少なくないです。

上白石 ああやっぱり。いろいろなものを見ておくこと、しっかり感じておくことが、ものを書くうえでどれだけ大事なのか、今回私もすごく感じました。

原田 萌音さんは、役柄を演じる時、舞台となる場所に行ってみたりするんですか。

上白石 はい。その土地を踏んでみないと空気感がわからないので、ヒントを見つけるために行きます。何事も経験しておくことですよね。『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』の、「最低の経験でも無駄にならないのだ」というフレーズがすごく響きました。

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