『いろいろ』(上白石萌音・著/NHK出版)

上白石 読書はもちろんですが、紙の質感や装幀なども含めて、「本」そのものが「モノ」としてたまらなく好きなんです。今回、紙や書体の選定、デザインにも関わり、本ってこんなに丁寧に、緻密に、愛情を込めて作られるものなのか、と改めて感動してしまいました。

原田 そのまっさらな気持ちに、私も立ち戻らなきゃ(笑)。これまで文庫を含めて三十数冊出してきて、ちょっと慣れてきたところがあったかもしれません。

 

読んでいる私は完全に娘目線

上白石 原田さんの最新刊『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』。題名のインパクトに惹かれて読み始めましたが、読み終えると「ダサい」という言葉がすごく愛おしく感じられて。肉親のなんとも言えないダサさ、愛情のくすぐったさ、素直に嬉しいと言えないもどかしさが溢れていました。

原田 荷物の隙間に詰め込んじゃうんですよね、お母さんって。いろんなおかずによくわからない下着、冬だとお餅をぎゅうぎゅうと。

上白石 そうです、そうです。私は鹿児島出身なんですが、母からの小包には郷土のお菓子とかちょっと甘いお醤油が入っています(笑)。読んでいる私は完全に娘目線で、登場人物と一緒に小包を開けている気持ちになりました。ここに登場する娘たちは、それぞれ葛藤や問題を抱えているけど、小包をほどくと同時にそれがほどけていく。そこにほっこりしました。