いがみ合い、憎しみ合ってまで家族でいることが、幸せといえるのでしょうか。血のつながった家族ともう二度と関わらない、という苦渋の決断をした人もいるのです。好美さん(仮名、67歳)は実家の弟夫婦の振る舞いに心を痛めていて――
下の弟の借金を肩代わりしていた父
家族と「縁を切る」といっても、私の場合、自分から積極的に関係を断ちたいと望んだわけではない。小さなトラブルが解消されないまま積み重なり、気がつけば、愛知で農業を営む実家の《跡取り》である3歳下の弟から、暴言、中傷を受けるようになっていた。
きっかけは15年ほど前。5歳下の次弟のアルコール依存症と、それに伴う借金地獄だ。父は世間体を気にして、私たちきょうだいに内緒で弟に代わり借金を返し続けていた。家を抵当に入れ、限度ギリギリまで借金がふくらんでいたことが発覚した時、父はただただ泣くばかり。仕方なく跡取りが債務整理を引き受け、福岡に嫁いだ私が、弟をアルコール依存症専門病棟のある近くの病院に入院させ、世話をすることになった。
弁護士に依頼して債務整理を済ませ、状況は落ち着いたかのように思えた。だが跡取りは、「弟の借金が次から次へと出てくる」と同居していた父を責め立てて、父の預金通帳を取り上げたのだ。
おかしいと思った私は、債務整理の書類を見せてほしいと跡取りに頼んだが無視された。仕方なく下の弟を連れて、弁護士事務所に直談判に行くことに。交渉の末やっと出してもらった書類を見てビックリ。土地を売ったお金のほうが、借金の返済額より多かった。跡取りは余剰金を無断で自分の懐に入れていたのだ。
さらに、父が跡取りに取り上げられた預金通帳を調べたところ、どれも残高が1000円以下になっているではないか。いったい何が起きているのか……。事態を呑み込めず私は呆然とした。