繁田さんの実家の片づけに、医療・福祉にかかわる地元の人々が駆けつけた

病気ではなく、人を見るべき

その後も2人の医師の縁は続き、繁田さんが監修を務める書籍の出版に、内門さんも協力することに。企画を手掛けたのは編集者の早川景子さん。早川さんには認知症の家族がいたこともあり、繁田さんの「病気ではなく、人そのものをみるべきだ」という考えに共感したという。

「本の完成打ち上げの席で、内門先生が『繁田先生の実家を認知症の人や家族のための場として使えないでしょうか』と提案すると、先生が『それ、いいね』。気づいたら、『私も手伝います!』と手を上げていました(笑)。書籍のもう1人の協力者である大澤誠先生も同意され、繁田先生のお母様が賛成してくれたらみんなで一緒にやりましょう、となったのです」と早川さん。

認知症の人や家族が自由に話をし、気持ちを整理する場所があればいいと常々考えていた繁田さん。そして、軽度認知症の人を支援する事業にかかわるなかで、スタッフが集って学べる「認知症カフェ」を地元に開きたいと願っていた内門さん。それぞれの思いが、この夜、偶然重なったわけだ。

「裏千家正教授の資格を持つ母は、実家で長年茶道教室を続けてきたので、多くの生徒さんが出入りしていた。もともと来客には抵抗がなく、家を使うことを快諾してくれました。人が住まない家は荒れるし、不審者が入り込むなど、なにかと物騒なこともありますから、空き家対策にもなって一石二鳥です」と繁田さん。

こうして「SHIGETAハウスプロジェクト」が誕生したのだ。