100年以上続き、かつて全盛を誇った「サラ金」。その背景にあったものとは(写真提供:写真AC)
2000年代まで全盛だったサラ金。実際、テレビCMや街角の広告を通じてその社名を見ない日はないほどでした。しかし『サラ金の歴史』(中公新書)で2021年度サントリー学芸賞を受賞した小島庸平東京大学准教授によれば、改正貸金業法の制定をきっかけに各社経営難に陥り、結果として存在感が薄れていったとのこと。高すぎる金利やいかがわしいイメージもあるサラ金ですが、小島さんが言うには、現実として貧困層のセイフティネットを代替するという「奇妙な事態」が生まれていたのも事実だそうで――。

ポケットティッシュを買う必要がなかったあの頃

アコム、プロミス、レイク、武富士、アイフル。

1990年代から2000年代にかけて、消費者金融企業の名前は、毎日のように目あるいは耳に入ってきた。テレビではCMが繰り返し流され、町には派手なデザインの広告や看板が林立。至るところにティッシュ配りの社員が立っていた。

あの頃、ポケットティッシュを買う必要はほとんどなく、サラ金各社からもらえばそれで十分だった。

一定の年齢以上の読者なら、サラ金がやたらと目に入る都市部の光景は、記憶の片隅に残っているのではないか。1982年に東京で生まれた筆者は、通勤・通学の道すがら、なぜこんなにも多くの消費者金融サービスが存在するのかと、よく疑問に感じたものである。

だが、21世紀生まれの学生に聞くと、サラ金がポケットティッシュを配るところなど、全く見たことがないという。確かに、街頭でティッシュをもらう機会は、格段に減った。

これは、サラ金業界による広告の自主規制強化や、無人店舗の増加に伴うティッシュ配り要員の減少などが原因である。深々と頭を下げてポケットティッシュを差し出し、「いってらっしゃいませ!」と声を張り上げるサラ金社員の姿は、すでに過去の存在となっている。