大鵬と北の湖の言葉に思うこと

NHKテレビの正面解説は、9月場所後に引退した第69代横綱・白鵬の間垣親方。土俵上の取組よりも、間垣親方の発言に集中した。その理由は二つあり、ひとつは横綱になった人の解説は、「いいこと言う」と思える名言があること。もうひとつは、かなり前に読んで書籍名は忘れたが、「若い力士が、自分のいる相撲部屋に親方が何人かいて、相撲の指導でそれぞれ言うことが違い迷ってしまう時は、幕内で引退したばかりの親方の言うことを聞くべきだ」と書いてあったからである。

今でも役立つ名言は、第48代横綱・大鵬と第55代横綱・北の湖が親方となり、それぞれテレビの解説者として出演した時の言葉である。時代は違うが、2人とも日本相撲協会の重要な役職に就く前で、アナウンサーが「その仕事は大変ですね?」と尋ねると、大鵬も北の湖も「まだ、やってみないからわかりません」と同じ返事をしたのである。

私は幼い頃から心配性で、なんでも大袈裟に考えて怖がっていた。それで母から「上野駅のホームに立って山手線で3駅先の駅に行く人より、青森駅に行く人の方が行く前から疲れているのよ」と言われたが、その時はその意味がよくわからなかった。

大鵬の言葉を聞き、さらに北の湖の発言も聞き、私は自分がやってみてもないのに大変だと思い込むのは、想像によるプレッシャーであることを知った。プレッシャーに負けない、このような考え方ができるから、大鵬も北の湖も大横綱になれたのだと思った。