血縁によらない”家族”を作っていけばいい

もうひとつ訴えたかったのは、「血のつながりだけが家族なのか?」ということ。この作品でも、千鶴は実の母である聖子より、母の介助を担う彩子と相性がいい。お互いに支え合っていけるなら、それもひとつの“家族”と呼べるはず。

私が考える家族の定義は、血のつながりにかかわらず、同じ食卓を囲みながら、お互いを見守り、支え合える関係です。

血縁だけに縛られていると、生きづらい人も多いでしょう。だったら、自分なりの新しい家族の形を作っていけばいい。そう思っているので、家族の姿を描くときは食事のシーンを一番大切にしています。

作品中、母の症状が進んでとまどう千鶴には、認知症の祖母に接したときの私の葛藤を重ねています。『星を掬う』というタイトルも、認知症の方の頭の奥底に沈んでいる記憶を掬いあげるようなイメージなんですよ。

改稿に改稿を重ね、ようやくこの作品を世に送り出すことができました。春からは下の息子が幼稚園に入り、書く時間も増えそうなので、「最新作が代表作」と言われるように、一作ごとに成長していけたらと思っています。