サラ金はグラミン銀行より「低利」
言うまでもなく、貧しい人ほど借金の返済能力は低い。返済能力が低ければ、債務不履行のリスクが高いと判断されるので、どうしても貸し手に敬遠されてしまう。貧困に陥った個人が金融機関から金を借りるのは、本来なら極めて困難なはずである。
発展途上国を対象とする開発経済学では、望んでも金を借りられない貧困層に対し、金を貸して所得を増やす機会を提供することを「金融包摂(financial inclusion)」と呼び、重要な論点としてきた。
金融包摂の成功事例として注目を集めたのが、バングラデシュのグラミン銀行である。同銀行は、貧困者を五人グループにまとめて資金を貸し付け、返済の連帯責任を負わせることで円滑な貸金回収を実現した。金利は年20%だったから、現在の大手サラ金よりも高利である(ユヌス2007)。
だが、この方式を編み出した創設者のムハマド・ユヌスは、貧困削減への貢献を理由に、2006年にノーベル平和賞を受賞している。貧困者に無担保で少額の資金を貸し付けること(これをマイクロ・クレジットと呼ぶ)は、成功すればノーベル賞が与えられるほど、困難な事業だったのである。
にもかかわらず、日本のサラ金は、フルタイムで働いても家計を維持できなかった横山さんに金を貸し付け、金融的に包摂していた。なぜ純粋な営利企業であるはずのサラ金が、貧困層を金融的に包摂するに至ったのか。