先日99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんのもとで秘書を務めてきた瀬尾まなほさん。10年にわたり、誰よりも近くで寂聴さんを見つめ続けてきました。一緒に過ごした最後の数か月について今振り返って、まなほさんが感じたこととは。(構成=篠藤ゆり・2021年12月8日に取材)
なにかの瞬間に悲しみや淋しさが
瀬戸内が亡くなって1ヵ月ほど経ちましたが、まだ遠くに行ってしまったという実感が湧きません。それでも時々なにかの瞬間に悲しみや淋しさが襲ってきます。
訃報が流れた11月9日以降、寂庵での偲ぶ会や天台宗の本葬、お別れの会の準備などが続きますので、毎日仕事に追われています。まるで、いまも入院中の瀬戸内の代わりに私たちスタッフが動いているような、そんな感覚です。
2021年9月、瀬戸内は風邪をこじらせ肺炎で入院しました。以前であれば、風邪をひいてもすぐ治っていたので少し心配になりましたが、本人はいたって元気。11月14日の得度記念日はどうしようか、「来年5月の100歳の誕生日はコロナも落ち着いているだろうから盛大に祝おう」などと話していたのです。9月末に退院した時はいつも通り晩酌を楽しみ、原稿を書いていました。
10月初めに再入院。お見舞いに行くたび、いつもかわいがってくれている私の2歳の息子の話になり、「ああもう、あの子に会いに帰りたい」と言っていました。息子の誕生日が12月なので、瀬戸内は「私からのプレゼントのおもちゃ、買っておいてね」と。私は、「まだ日があるから大丈夫」と言って先延ばしにしていました。
体調が悪化したのは10月末。その前日はいつも通りの様子で、私が「先生のところに来て10年たちました」と話しかけると、「10年なんてあっという間。早いね」。
帰る時に「明日また来ますね」とご挨拶したら、「ありがとう」と答えてくれた。それが瀬戸内との《最後の会話》となりました。