「寝る間を惜しむ」のは得策とは言えない

実は、学習と睡眠の関係については、古くから研究のテーマになっていました。

すでに1924年には、ジョン・ジェンキンスとカール・ダレンバッハが記憶に及ぼす睡眠の影響を調べており、睡眠の重要性を指摘しています。

彼らが用いた記憶材料は無意味綴りと呼ばれる覚えにくいものでしたが、記憶した後に睡眠をとった条件では50パーセント以上を覚えていたのに対し、睡眠をとらなかった条件では、10パーセント程度しか覚えていませんでした。このことから、何かを覚えた後には睡眠をとった方がよいことがわかります。

記憶以外にも、睡眠をとる条件ととらない条件を比較した研究が紹介されています。

たとえば、コンピュータ画面上に瞬間的に呈示された複雑な模様の特徴を認識する課題や対連合学習課題(二つの語をペアにして覚える課題)、音程を聴き分ける課題、コンピュータシミュレーションを用いた空間課題など、実にさまざまな認知課題において、睡眠をとったグループがとらなかったグループよりもよい成績をあげたという数々の知見があることが示されました*1

さらに、中高生を対象とした調査研究では、平日の睡眠時間が7時間以下の生徒の成績が芳しくないという報告があります*2。こうしたことから、睡眠時間を節約することは、学習にとって賢明ではないと言えます。

睡眠をとらずに起きていると、頭を使う認知的な作業の効率は低下します。「寝る間を惜しむ」のは得策とは言えません。

たまに、「テストの前日に猛勉強をしても、いったん眠ると、せっかく詰め込んだ知識を忘れてしまうのではないか」と心配して徹夜をする人がいるようですが、それでは肝心のテストの際に頭の働きが悪くなり、残念ながら逆効果になってしまいます。

睡眠の効果について、きちんとしたメタ認知的知識を持ち、積極的に眠りを活用した方がよいでしょう。