「脚本にも惹かれたんですが、中川監督からいいただいた手紙やそこから伝わってきた人柄に惚れ込んでしまったんです」(撮影◎本社・中島正晶)

監督からの手紙に心を動かされた

塩谷 :ドラマのお話をいただいたのは、2年前くらいのことです。突然、中川龍太郎監督から電話がかかってきて、『銭湯図解』ができるまでの物語をドラマにしたいと……。最初はびっくりして頭が真っ白になっちゃったのですが、ありがたいことだなと思い、いいですよとお返事しました。でも、ちょっとだけ不安もあったんですよ。私は、大学卒業後に設計事務所で働いていたのですが、仕事にのめりこみすぎて体調を崩してしまい、休職。友達の勧めで訪れたのがきっかけで銭湯にハマり、その魅力を伝えようとイラストをSNSに投稿したところ反響をいただいて。そんな時、小杉湯の三代目経営者である平松佑介さんに「うちで働かない?」と声をかけていただき、転職しました。そういう経緯を、例えば設計事務所が悪いように描かれたり、銭湯に行ったら鬱が治るように描かれたりしたらどうしよう、と思って。

森崎 :塩谷さんの思いとは違う方向で。

塩谷 :でも、去年の5月くらいに、中川監督と町田の街を2時間くらい散歩する機会があって。

森崎 :2時間! すごいなあ。(笑)

塩谷 :その時、あのビルおもしろいね、あそこの川いいよね、と二人とも見るポイントが同じで。この人は私と同じ目線で世の中を見てるんだなと思って。中川監督の作品も全部観たのですが、その美しさにも心惹かれました。そういうこともあって、中川監督なら大丈夫だ、この人に任せようって思ったんです。

森崎 :僕もこの作品に出演を決めた大きな理由は、中川監督なんです。この役のお話をいただいた時、中川監督からお手紙が来たんですよね。内容は……言葉にすると軽くなっちゃうから言わずに心にしまっておきます(笑)。とにかくそこに書かれていた言葉に、心を動かされて。映画やドラマって、それを作っている間はそれがどんなものになるのか、観てくれる方がどう思うのかわからない。僕らがいくらいいと思っても、受け取る側のお客さんが全然ダメだと思うこともあるし、逆に僕らが「これはどうかな?」って思っていても、それがバズったりもする。そういう中で、何を信じて演じればいいかとなった時、やっぱり僕は監督だと思っていて。監督に対する信頼がどれくらい強いかでその作品に対する愛が変わってくるんじゃないかなと。もちろん、脚本にも惹かれたんですが、中川監督からいいただいた手紙やそこから伝わってきた人柄に惚れ込んでしまったんです。

塩谷 :とてもわかります。