熊谷を演じる森崎さん(左)(ドラマ『湯あがりスケッチ』より)

銭湯がくれた出会い

森崎 :僕が演じる熊谷は、劇作家志望。僕は俳優の仕事のほかに音楽活動もしていて、ライブ制作にも携わっています。何かを0から作り出すという点では、役柄と共通点もあるのですが、僕が最初に台本を読んだ時に感じたのは、この熊谷というキャラクターに監督自身の人生が投影されているんじゃないかということ。塩谷さんと監督の出会いのように、穂波の人生の中にも何かを制作する人が現れたら……ということで熊谷というキャラクターが作られたのかなと思ったんです。

塩谷 :実は、森崎さんの演じる熊谷に近い人が、実際にいたんですよ。

森崎 :え! いたんですか!? その話は監督にしましたか?

塩谷 :撮影が始まってから。そうしたら「いたのかー!」みたいな顔をしていて。(笑)
森崎 :へー、それは面白い!

塩谷 :その人は銭湯の常連客で、ミュージシャン。練習の後に来ていたのかな、いつもギターケースを持っていたんですが、銭湯ってロッカーが小さいから、大きい荷物は番台に預けなきゃいけない。毎回、番台でやり取りがあるので、会話も増えてきて。私は昔ベースをやっていたので、「それエフェクターですか」とか音楽の話で盛り上がりました。そんなある日、「今度近くでライブやるから見に来ませんか?」とチケットもらったんです。

森崎 :えー! それでどうなったんですか?

塩谷 :見にいったんですけど……、ふーんって感じで。(笑)

森崎 :ちょっと違ったな、みたいな(笑)。俺、塩谷さんをライブ呼ぶのはやめよう(笑)。ふーんって思われるかもしれない。(笑)

塩谷 :いやいやいや(笑)! そこから何か発展するということはなかったんですが、
高円寺の町自体、音楽や演劇関係の方が多い場所ですからね。たくさんの面白い出会いがありました。例えば毎日、来てくれるおばあちゃんがいたんですが、最初は結構ツンツンしていて「何あなた、若い子がこんなところで働いていていいの?」なんて言っていたんですが、徐々に親しくなって、最終的に「パン余ったからあげるよ!」って。(笑)

森崎 :ツンデレかい!(笑) かわいいな。

塩谷 :普通に生活していると、同世代以外と話す機会って限られますよね。だから、歳の離れた人との些細な会話が、心に残っています。