社会現象になった『ちびまる子ちゃん』

初めて『ちびまる子ちゃん』のアニメを見たときは正直、驚いた。

いままで見てきたテレビアニメとは全然違っていたからだ。「奥行きもないし、なんだかえらく薄っぺらい絵だなぁ~」っていうのが最初の印象だった。番宣のときは15秒と短いから、さほど気にならなかったんだけど、いざ、始まってみたら全編それでしょ。で、雑誌(少女漫画雑誌「りぼん」/集英社)の連載でも、絵はあのまんまだっていうから、「ええ、そうなんだぁ!?」って。でも、話はすごくおもしろかった。

1965年(昭和40年)生まれのさくらももこさんが、静岡県清水市(現在の静岡市清水区)で過ごした小学校3年生のころの出来事をもとに、家族や友だちとの日常生活を描いているのだけど、昭和の子どもの目線で描かれたストーリーや、個性豊かな登場人物がユニークで、「ああ、これはおもしろいな!」って、僕自身もどんどん乗り気になって、作品の世界に引き込まれていったんだ。

それと同時に主題歌の「おどるポンポコリン」〈B・Bクイーンズ/1990(平成2)年〉が大ヒット! その年の大晦日には「第三十二回日本レコード大賞」を受賞するほどの快進撃だった。

番組が始まって初めての夏。日曜日の夕方に地元の松戸を歩いていたら、あっちの家からもこっちの家からも主題歌が聞こえてきたの。

わずか150メートルぐらいの狭い道路の両側にずっと店があって、2階が住居っていう感じの下町の商店街なんだけど、夏場だから窓を開け放しているし、テレビの音がよく聞こえてきて、いや~、あれはすごかった。

「みんな同じ時間に、同じものを、こうやって見てくれているんだぁ」って思ったら、うれしくなっちゃって。自分が出演している番組でこういう経験をすることは初めてだったから、もう一回戻って、立ち止まって確認したりして。

「ああ、こういうことを“社会現象”って言うのかなぁ」って、感動したことを覚えている。