自分のやりたかった芸風はこれだったんだ

『ちびまる子ちゃん』の収録現場は、みんなの雰囲気もよかった。初顔合わせの人も多くて、とにかく楽しかった。番組スタートから「せーの」で一斉に始まって、みんなで番組を作り上げていくのは、ワクワク感しかなかったなぁ。

キートン山田さん、39歳の頃。NHK教育テレビ『理科教室 小学校一年生~なんなんなあに~』に登場する”どんとのおじさん”役を演じていた際の一枚(写真:著者提供)

収録が進むにつれて、「この作品は作り込んだり、オーバーに演じたりしなくてもいいし、こんなふうに素直に声を出して、自分の思うように、マイペースで自然体のまま溶け込んでいけばいいんだな」っていう感触がつかめてきた。

やがて、「あ、これだ! 自分のやりたかった芸風はこれだったんだ。このために、いままで辞めずに頑張ってきたんだ。あきらめなくてよかったなぁ」って、確信が持てるようになった。

それと同時に、番組の視聴率もどんどん上がっていって、どこに行っても、「キートンさん? ああ、あの『ちびまる子ちゃん』の?」っていう反応が返ってくるようになっていったんだ。

取材も、それまではアニメ雑誌などの媒体が多かったのが、いきなり新聞や週刊誌からの依頼が増えたりして、番組のおかげで僕を取り巻く周りの環境もずいぶん変わってきた。いやぁ、本当にわかんないものだなぁ。自分の頭で思い描いている以上の反響があって驚いた。