「後半へ続く」はアドリブだった

そんな中で自然と生まれたのが、あの「後半へ続く」というお馴染みのフレーズだった。

『ちびまる子ちゃん』が始まった当初、さくらももこさん自身も脚本に携(たずさ)わっておられて、一回の放送を前半と後半に分ける構成になっていた。

ある日、たまたまCMに入る前に一秒半の間が空いたので、僕はアドリブで「後半へ続く」と言ってみたの。そのころは台本通りのナレーションをするのが常識だったから、さくらももこさんも、製作スタッフも、アドリブを歓迎する雰囲気ではなかったんだけど、なぜかその日の「後半へ続く」は採用になって、そのまま放映されたんだ。

そして、うれしいことにその後は、さくらももこさんが自ら脚本に「後半へ続く」と書いてくれるようになってね。まさか、あのアドリブが長年にわたって番組の“決めゼリフ”になるなんて、思ってもいなかったねぇ。

もちろん、あれだけの人気番組だから、プレッシャーもあった。自分を引き締めないといけないし、欲張っちゃいけないし、あくまでも淡々と、でも水面下ではしっかり泳ぎ続けないといけない。

よく、「変わらないためには、変わり続けるんだ」という言葉を聞くけど、本当にそのとおりで、陰ではしっかり努力して、変わり続けていかないと、いつも同じようにやっていたらあっという間に古くなっちゃう。

たとえば、伝統の味を守り続ける職人さんは、「味を変えない」ために、実は変えているんだよね、飽きられないように……。何十年後にも、「昔と同じ味だね」と言ってもらうためには「常に変えている」んだって。

それが進化っていうことなのかもしれない。僕たちの仕事も同じ。マンネリになっちゃいけない。

※本稿は、『第三の人生は、後半へ続く!』(潮出版社)の一部を再編集したものです。


第三の人生は、後半へ続く!』(著:キートン山田/潮出版社)

独身時代を「第一の人生」、子育てと仕事をしている時期を「第二の人生」とすれば、まさにいま「第三の人生」を歩み出した声優・ナレーターのキートン山田氏。これまで生きてきた人生の中で一番短くて、だけど人生の総仕上げをすべき一番大事な期間。「いまが最高」と思って人生を終えることこそが、きっと”生涯現役”だ !