「大自然に囲まれた土地に移住しようと、具体的に夢見るようになったのは70の声を聞いてから。」(写真提供=大空さん)
81歳で住み慣れた土地を離れ、沖縄・石垣島へ──。肩の荷を下ろして、残りの人生を謳歌したいと語る大空眞弓さんの今の暮らしぶりとは。(構成=丸山あかね 写真提供=大空さん)

第一線からは退こうかなと思った時期と重なって

余生を穏やかな景色の中で過ごしたいというたっての願いから、2021年4月に石垣島へ移住しました。それまで住んでいたのは、東京の千代田区富士見。小学生のころから暮らしていた場所なのですが、富士見というくらいで、昔は家から富士山を望むことができたのに、いつの間にやらビル街に変わり、見えなくなってしまって。なんとなく息苦しさを感じだしたのは50代のころでした。

大自然に囲まれた土地に移住しようと、具体的に夢見るようになったのは70の声を聞いてから。セリフを覚えるのがしんどくなってきて、もう第一線からは退こうかなと思った時期と重なります。

でも、落胆なんかしませんでした。だって、老いは誰にでも平等に訪れる自然現象ですから。そのときに芽生えていたのは、希望です。私はもう十分にやってきたのだから、肩の荷を下ろして楽になりたい。そうしてもっと軽やかに、残りの人生を謳歌したいと考えていました。

母と歌舞伎座へ行った折にスカウトされ、石井ふく子プロデューサーによるTBSドラマ『愛と死をみつめて』で初めてヒロインを演じたのは24歳のときでした。あれから何年経つのかしら。とにかく私は81歳になりました。