けれど、魔法はいつか解けるもの。高価な品物の代償として高額の支払いが待っていた。気がつけば、わずかな退職金も貯金ももうない。一括で払えるような金額ではなく、心底焦った。

しかし、新しい魔法があったのだ。リボ払いという魔法だ。手続きはネットで簡単に。月々の支払いが数十万円から数万円になり、私は残額そのものがなくなったような気になった。カード会社からは、「ご利用限度額増額のお知らせ」という素敵な通知も届いたので、私は限度額を倍にした。

私はカード会社から「選ばれた」のだと錯覚し、これでまた気兼ねなく買い物ができると思い込んだ。ちょうど次の仕事が決まったこともあり、気が大きくなっていたのだ。

今月は、リボ払いで6万円を返済したが、すでにあのブランド店で20万円近くの買い物をしている。残債を見ればこれ以上買ってはダメだと理性が言うけれど、感情が上回って止められない。

 


婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ