「持ち運ぶ」作業を怠れば、歩くことも困難に
例えば、手術の際に、全身麻酔がかかった人の手足を持ち上げたり、仰向けからうつ伏せに変えたり、手術後に体を手術台から病棟用のベッドに移動したりする作業は毎日行われる。
このように体を移動させる作業は、それなりの重労働だ。決して一人ではできず、四、五人のスタッフが一緒に力を合わせて行う。自分の体は一人で運べるのに、他人の体は一人では到底運べないのだ。
特に全身麻酔中に体を移動させるときは、手と足に注意が必要である。手足はずっしり重いにもかかわらず、胴体とは小さな面積でしか繋がっていない。
四本それぞれを誰かがしっかり支えていないと、重みのままに勢いよく垂れ下がり、あっという間に関節を損傷してしまうからだ。
お互いが声を掛け合い、息を合わせて慎重に動かすのである。
体の重さが問題になるのは、手術のときだけではない。
入院が長引き、ベッド上の生活が長くなった人が、久しぶりに起き上がろうとすると全く立てなくなっている、ということはよく起こる。特に、もともと筋肉が弱った高齢者に起こりやすい現象だ。
胸やお腹の病気で手術を受けたり、心筋梗塞や肺炎にかかったりなど、足腰とは全く関連のない病気にかかったとしても、歩く力は自然に失われていく。
体を毎日「持ち運ぶ」作業を怠れば、見る見るうちに筋肉は弱ってしまうからだ。