なぜ片足10キロもするのに歩き続けることができるのかーー(提供:写真AC)

唾液はどこから出ているのか? 目の動きをコントロールする力は? 人が死ぬ最大の要因とは? おならは何でできているのか? 私たちの体は謎だらけ。その不思議に迫った、外科医の山本健人さんによる累計16万部突破のベストセラー『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』から一部を抜粋、編集してお送りする本連載。第2回は、「私たちの体は重い」。私たちが重い体を簡単に動かすことができるのはなぜか――

立ち上がることができますか?

あなたは今、この本を椅子に座って読んでいるだろうか?

もしそうであれば、まず正面を向き、頭の位置を前後に動かさずに立ち上がろうとしてみてほしい。きっと、全く立ち上がれないことに驚くはずだ。どれだけ足に力を入れようと、腰は少しも浮き上がらないはずである。

では次に、何も考えずに立ち上がってみてほしい。おそらく、最初に頭を思い切り前に突き出して、その後ようやく腰を浮かせるはずである。椅子から立ち上がるためには、まず「前屈する」という動作が必要なのだ。

なぜだろうか? その理由は単純で、重い臀部を持ち上げるためには、頭の重さでバランスを取る必要があるからだ。頭を前に突き出し、重心を前方に移動させることで、重い臀部を持ち上げるのである。まさに、「重い腰を上げる」ためには頭を使う必要があるのだ。

では、もう一つ実験をしてみよう。

今度は立った状態で足を肩幅に広げ、頭を左右に動かさずに右足を上げてみてほしい。おそらく、どれだけ足に力を入れても右足は地面から浮き上がらないはずだ。

では、どうすれば右足を上げることができるだろうか?

やってみればすぐにわかる。右足を上げる前に、上半身を左側に傾ける必要があるのだ。先ほどと同様に、重い足を上げるには、まず重心を反対側に移動することから始めなければならないのである。