左:カブールから退避した安井さん。自衛隊機の中で撮影/右:邦人退避のために派遣された航空自衛隊C2輸送機

一晩で景色が一変。飛び立つ輸送機にしがみつく人。

8月に入り、カブール陥落の前日ぐらいから「タリバンが市内西部にいた」と目撃情報がSNSに上がり始め、「ああ、ついに来るんやな」と思いました。

でもその時点では街はまだいつも通りの状態で。ところが家に帰って一晩経つと、景色が一変していました。

新市街の中心部にある職場を出て歩いていたら、大きな白いターバンを巻いてカラシニコフ銃を持った人が道に立っている。白い旗が遠くにひらひらと上がり、足音も銃声もなし。気がついたらタリバンが街にいたという感じでした。

一方、15日にカブールが落ちると、パニック状態になった人々が国外脱出しようと空港に押し寄せます。

滑走路から飛び立つアメリカの輸送機に死に物狂いでしがみついたり、車輪の格納部に隠れたり、威嚇射撃を受けたりして、多くの方が亡くなりました。飛行機から落ちた人の中には、ユースチームのサッカー選手やお医者さんもいたんですよ。

かつてのタリバン支配を知っている人には恐怖の記憶が残っているし、若い人たちもそれを伝え聞いています。この20年でタリバンが変わったかどうかは誰にもわからないし、これまでも国内には極度の貧困が蔓延していた。

このうえタリバンが来て学校に行けなくなったり、生活がさらに不自由になったり、殺される恐怖を味わったりするくらいなら、もうこの国にいる意味はない。そう思った人も多かったのでしょう。

あのときは、欧米系組織などに勤めている人は無料で輸送機に乗れたので、そのドサクサにまぎれて国外に出た人もたくさんいました。