故郷・福島に元気を

若隆景は初優勝のうえ、新関脇での優勝は「相撲の神様」と言われる第35代横綱・双葉山が昭和11年に新関脇で優勝して以来86年ぶりという記録も作った。若隆景は祖父が元小結・若葉山、父が元幕下・若信夫、兄は現在活躍中の幕下13枚目・若隆元と前頭9枚目・若元春という相撲一家だ。優勝して花道を帰る若隆景を、付け人をしている若隆元が嬉しそうに待っていた。

出身地は福島。福島駅前には、父親と大勢の人たちが集まり大喜びしていた。
若隆景は優勝の賜杯をもらった後、「震災から11年たってまだ復興も進んでいないところもある。自分が土俵で出来ることを精いっぱいやって、いい姿を届けたい」と土俵下でのインタビューで語った。3月16日の地震で被害を受けた福島の人たちも、この優勝を喜んでいることがNHKのニュースで伝えられた。

千秋楽の取組を振り返ると、若隆景と高安が2敗で並び、3敗の前頭6枚目・琴ノ若がそれを追っていた。琴ノ若は先場所も優勝にからみ、強くなった。祖父が「猛牛」と呼ばれた第53代横綱・琴桜(桜は旧字)、父が元関脇・琴ノ若(現在の佐渡ケ嶽親方)だ。

琴ノ若が負ければ脱落するが、勝って、若隆景と高安が負ければ巴戦が見られる! という期待は、残念ながら琴ノ若が、勝ち越しをかける新小結・豊昇龍に負けた時点で失われた。しかし、初優勝を逃したものの、琴ノ若は「敢闘賞」(3回目)を獲得した。

次に高安が、こちらも勝ち越さなければならない新関脇・阿炎にバンバンと突かれて送り出しで負けた。勝ち越しがかかった力士は勝つこと以外の雑念がなくなり、優勝を意識している力士を上回る、という新しい発見があった。