『ラスト サムライ』の現場で、エドワード・ズゥイック監督と(写真提供◎奈良橋さん 以下すべて)

しかし、声はかけられたもののしばらく動きがなく、半年後にようやく主演がトム・クルーズに決まったと連絡がありました。アメリカの映画は、トムのようなAランクの役者が主役に決まったとたん、急速に進行していきます。

実はトムに決まる前、エドワードは日本の役者の実力を見るために、一度来日していました。私は幕末がテーマの作品を演出していますから、周りには殺陣のうまい役者がたくさんそろっています。

監督へ直接アピールするチャンスということで、体育館を借り、殺陣を極めた真田広之さんはじめ、大勢の役者を集めてここぞとばかりに殺陣のショーを披露しました。アメリカ人カメラマンも迫力あるその模様をビデオカメラで撮り、アメリカ側のスタッフは「いいね」を連発し、大満足で帰っていきました。

外国映画に日本人の役者をキャスティングするには、役のイメージに合うことはもちろん、英語力、演技力などいろいろな条件があります。でもいちばん大切なのはやはりイメージです。

『ラスト サムライ』に登場する「勝元」の役に求められるのは、明治新政府に敵対する侍のリーダーとして、馬に乗ったり勇ましく戦ったりする勇壮さ。パワーとカリスマ性にあふれた人物でなければいけない。私が最初に監督に紹介した、渡辺謙さんが演じることに決まりました。