朝ドラ『カムカムエブリバディ』もいよいよ残すところ2週、伏線の回収にも注目が集まるところ。主人公・ひなたが条映太秦映画村の職員としてアテンドしたハリウッド映画『サムライ・ベースボール』のスタッフの中に、女性のキャスティングディレクター、アニー・ヒラカワがいた。森山良子さん演じるアニーが「大月」の餡子を愛おしそうに食べたり、安子なのでは? とSNSでも盛り上がりを見せている。そのアニーのモデルとなったのが、トム・クルーズ主演映画『ラスト サムライ』に日本人俳優を起用した、キャスティングディレクターの奈良橋陽子さんだ。当時は真田広之さんらが実際に監督の前で殺陣を披露したとか。奈良橋さんの仕事について、『婦人公論』連載「Beautiful Name」から3回にわたって掲載する。第2回は『ラスト サムライ』について(構成◎柴本淑子)

殺陣のうまい役者をそろえる

前回は、キャスティングディレクターの仕事内容や、私がこの役割を担うようになったきっかけなどについてお伝えしました。今回は、これまでキャスティングディレクターとしてかかわった作品のお話です。

日本の俳優が多数起用されて話題になったのが『ラスト サムライ』です。明治初頭の日本を舞台に、日本人と武士道を描いた作品ですが、れっきとしたアメリカ映画です。主演はトム・クルーズ。渡辺謙さんや真田広之さんなど、日本の俳優が海外進出するきっかけになった作品でもあります。

2004年度に日本で公開された映画の中で、興行成績は第1位。アメリカでも大ヒットして、私にとっても大きな仕事になりました。

監督を務めたエドワード・ズウィックは、黒澤明監督の影響を受けていて、侍の映画に大変な興味を持っていました。しかし、日本が舞台の侍映画ですから、どうやって理想の役者を集めるかで悩み、幕末の侍が登場する芝居をいくつか手がけていた私に注目したようです。

当時、私が演出していた一つが『ドリーム・オブ・パッション』という、幕末の若き志士たちの物語。その舞台をワーナー・ブラザースの弁護士が見に来ていて、これならイケると思ったのでしょう、翌日にすぐ監督のエドワードから、キャスティングを手伝ってほしいとの連絡がありました。シナリオを読むととてもおもしろかったので、私も快諾しました。