〈原因〉骨盤底の筋肉がダメージを受けて起きる

妊娠・出産によって尿道括約筋など骨盤底の筋肉がたるむと、尿道の締まる力が弱くなります。これが腹圧性尿失禁の原因です。そして、尿意切迫感がある過活動膀胱は40歳以上の日本人の約14%に生じます。脳卒中やパーキンソン病など神経に関連する病気が原因の場合もありますが、加齢に伴って骨盤底の筋肉が弱くなっていくことも関係しています。そのほか、膀胱や子宮などが膣から出てきてしまう骨盤臓器脱、男性の場合は前立腺肥大症も過活動膀胱を招く原因に。腹圧性と切迫性をあわせもつ混合性尿失禁も少なくありません。

膀胱炎は、細菌が尿道から膀胱の中に入り、繁殖して発症するもので、原因菌の8割は大腸菌です。「トイレに行くのを我慢するとなりますか」という質問をよく受けますが、尿は本来無菌なので正確には「NO」。ただ、膀胱に菌が入り、排尿の間隔があくと、菌が排出されずに膀胱内に留まる時間が長くなり、繁殖しやすくなります。対策は、膣や肛門にいる菌が尿道口から膀胱に入らないようにすること。陰部の周囲には普段から菌がいます。性行為の後、そのまま寝てしまわずに排尿して、尿道に入ったかもしれない菌を出すのも予防の一つです。

 

〈治療〉筋力トレーニングと投薬、手術治療も

腹圧性尿失禁も切迫性尿失禁も、骨盤底の筋力の低下が関係しているので、骨盤底筋訓練が推奨されています。膣と肛門を締めたり、緩めたりを10回ぐらい=1セットとして、毎日5セットほど続けてください。2~3ヵ月続けると約7割の方で効果を感じられます。

腹圧性尿失禁には、尿道の抵抗を高める「βアドレナリン受容体作動薬」という飲み薬が使われます。副作用として、指先のふるえや動悸が出ることがあります。2週間ぐらいで効果がわかります。もっとも効果が確かなのは、グラグラしている尿道をテープで支える手術(下図参照)で、膣や下腹部を小さく切開して、ポリプロピレンでできたメッシュ状のテープを入れる方法です。

尿道の支え方によってTVT手術とTOT手術という2通りの方法があります。いずれも局所麻酔で、1~2泊の入院で実施で手術可能です。

切迫性尿失禁を招く過活動膀胱には、抗コリン薬やβアドレナリン受容体作動薬が処方されることが多いですが、トイレに行くのを少し我慢することで膀胱を広げる「膀胱訓練」を併用するとより効果的です。

膀胱炎治療は抗菌薬の服用が中心。水分を多めに摂って膀胱を洗い流せば、悪化を避けられます。

●尿失禁の手術治療

尿道をテープで支える手術。支える方法は2通りある(図提供◎巴先生)