うつ病を発症して退職した長男。パチンコにのめり込んだりしながら借金を重ね……(写真提供:photo AC)
2019年7月に行なわれた国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、親が生存している20歳以上の成人18672人のうち、親と同居している人は「35.2%」とのこと。平均寿命の伸びとともに、親と子がかかわる期間も伸びることが予想されます。しかし同居の場合、それぞれの生活様式や価値観の違いから軋轢が生じることも――。一つ屋根の下、実子と同居する親たちに、日頃感じている違和感を吐露してもらいました(取材・文 古川美穂)

<前編よりつづく

うつ病、借金、出る出る詐欺

35歳・独身の息子を持て余す和泉静香さん(62歳)は、一刻も早い自立を望んでいる。

「テレビドラマで親が子に向かって『勘当だ!』と言うシーンがありますけど、勘当って、一体どうやったらできるのでしょうか」

息子は高校卒業後、家を出て県外の会社に就職。だが上司と衝突し、職場にもなじめず、2年後にうつ病を発症してしまう。

「会社を辞めてアパートに引きこもり、死にたいと言うので夫と実家に連れ戻しました。しばらく休んだ後、家から工場のバイトに通い始めたけれど、3ヵ月でまた行き詰まって自殺未遂。どう接したらいいかわからず、私もうつになりそうでした」

もう一つ困ったのが借金だ。友人に感化され突然高価なバイクをローンで買ったり、パチンコにのめり込んだり。

「一人暮らししていたとき、税金や携帯電話代を滞納していたようで、わが家まで督促状や差し押さえの通告が来たことがあります。うちに戻った後、消費者金融で何十万円も借金をしたと知ったときは驚きました。借金なんてしてないと嘘を言っていましたが、問い詰めたら白状して。仕方なく、バイクは私が売って借金返済にあて、足りない分は肩代わり。でも本人は懲りずに無駄遣いを続けています」

その後、長男は知人に誘われて新しい職に就いた。今回の仕事は人間関係もよく、すぐバイトから正社員に昇格。パチンコからは遠ざかった。うつも改善し、毎日会社に向かう息子の姿にホッと胸をなでおろす和泉さん。だがいつまでこの状態が続くだろうかと不安を漏らす。

「女性に苦手意識があって結婚願望はゼロ。口ではすぐにもまた家を出ると言うけれど、『出る出る詐欺』で、親をなめきっています。私も親の介護が始まったし、そろそろ自分たち夫婦の老後も考えないといけません。息子は何もあてにならないので、とにかく家を出てくれればと」