2019年7月に行なわれた国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、親が生存している20歳以上の成人18672人のうち、親と同居している人は「35.2%」とのこと。平均寿命の伸びとともに、親と子がかかわる期間も伸びることが予想されます。しかし同居の場合、それぞれの生活様式や価値観の違いから軋轢が生じることも――。一つ屋根の下、実子と同居する親たちに、日頃感じている違和感を吐露してもらいました(取材・文 古川美穂)
別人になってしまった娘
「今一緒に暮らす娘は、かつての娘とは別人」とため息をつくのは、藤木光江さん(64歳)だ。
一人娘が27歳で体調を崩して東京での仕事を辞め、実家に帰ってきたのは、10年ほど前のこと。その数年前に夫が病気で他界し、一軒家に一人暮らしだった藤木さんは自然に娘を迎え入れた。
体調が回復した娘は、ほどなく結婚。娘の夫は独身寮暮らしだったので、夫婦二人で藤木さんの家に住むことになった。
「すぐ孫が生まれ、その頃から私に対して娘が強く出るようになって衝突が増えました。些細なことですが、たとえば私は台所をきちんと片づけ、調味料も収納したい。でも娘は楽だからと、何でも出しっぱなし。注意するとたちまち不機嫌になる」
保健師としてフルタイムで働き、家事もこなしてきた藤木さん。今や台所の主導権は完全に娘に握られた。