アフリカの人の豊かさを伝えたくて

MISIA はい。で、学校の子どもたちが集まって来て、最初に放った言葉が、「大丈夫だった? 足元、大変だったでしょう」。なんかそれがすごい、もう胸に迫って来て……。

中村 自分たちよりも、やって来てくれた人を心配する優しい言葉。

MISIA そうなんです。私は、「僕たちはこれが大変、あれが大変」とみんながしゃべってくれるんだと想像していました。それを聞いて、何がこの子たちに必要なのかを考えるのかなって。でも、なんかこう、違うんですよね。

最初、「マライカ」というケニアの歌を子どもたちに教えてもらっていたら、どんどん子どもたちが集まってきて……。いつしか歌も遊びに変わって、気がつけば3時間ぐらいみんなで遊んでました。打ち解けると、家族や友人、身の回りのこと、いろんなことを教えてくれました。スラムの現状がわかって気づかされることも多かったですね。

中村 ほかにはどんなことを?

MISIA キベラ・スラムの後は、自給自足の村やマサイの村などいろんな場所を訪れました。ある村に泊まった時、停電するとみんなブワーッと走り出す。私たちも急いで逃げたんですけど、どうやら強盗に遭わないためらしい。そういう中で本当のアフリカを垣間見て、大変なところはあったけれど、やっぱり感動したのは、そこに住む人たちの心の豊かさ。

孤児を引き取って育てている人とか、親を亡くした子どもには親を与えればいいと村全体で育てていたり。この豊かさって何なんだろう、すごいなあって逆に教えられました。「日本の子どもも泣いている子が多いんだ」って言ったら、「じゃあこっちに連れて来い。一緒に育てるから」って。

中村 物質的な豊かさはないかもしれないけれども、心の豊かさは溢れんばかりですね。

MISIA そうなんです。だからTICADなどの国際会議がありますけど、そういう心の豊かさの面からも、アフリカのことをみんなに知ってもらえたらどうかなって。私が知った豊かな部分は絶対になくしてほしくないし、そして伝えたい。そういう意味でも、日本人にもアフリカを知ってほしいし、一緒に考えてもらえたらいいなって思います。