まずは両親の施設入居を検討すべし

しかし現実には、要介護度が進むにつれて夜間も訪問介護が必要になるなど、利用できる公的サービスの限度内ではまかなえないご家庭も増えていきます。相談者のケースも、お父様の要介護度が進めば、お母様の負担も介護費用も増えるでしょう。では、どうすればよいのか――。

まず、ご両親の施設への入居を検討すること。要介護3以上であれば、特別養護老人ホーム(特養)への入居申請が可能です。特養の料金は収入と貯蓄額によって決まります。ご両親の貯蓄総額が1650万円以下ならば軽減措置の対象になるので、負担は一人あたり月数万円ですむでしょう。

さらに入居先としておすすめなのが、ケアハウス。同じく公的な助成制度があるため、比較的安い料金で利用できます。料金は収入によって決められ、貯蓄額は問われません。

自立した人が対象の一般型、要介護1以上が条件の介護型、自立者と要介護者どちらも入居できる混合型があり、混合型で夫婦用居室があれば、介護されるお父様と介護するお母様が一緒に入ることもできます。ただし、混合型は数が少ないのが現状です。

もし自宅に親を引き取って介護する必要が出てきた場合は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を利用するとよいでしょう。これは地域密着型の24時間対応サービス。自宅での食事や排泄、清拭(せいしき)、寝返りの介助など、希望に応じて1日複数回の介護を継続して受けられます。

費用は要介護度によって異なり、月額約8000円から3万円ほど。利用できる地域は限られますが、仕事を辞めることになるくらいなら、対応している地域に引っ越す選択肢もあると私は思います。公的サービスの情報を集め、プロの力を借りて態勢を整えていきましょう。

なお、親の介護をめぐってきょうだい間でしこりが残らないように、一度はお姉さんと話し合うべきです。相談者が親の世話をしているので、たとえば交通費を1〜2万円負担してほしいと要求してもいいと思います。

一方、お姉さんは「親のお金を妹が勝手に使っている」と思っているかもしれません。実際、相続のときに親のお金を使った、使っていないで揉めるケースも。そうならないために、親の貯金簿をお姉さんに見せて財産状況を明らかにしておきましょう。親の貯蓄の範囲内で介護をしていると数字で示すことは、何より説得力があります。