モノを持つことで、逆に苦しむことに……
川村 今ハリウッドで映画を何本か作っていますが、日本人がアメリカの壁を突き破る難しさを痛感しています。けれど、近藤さんは軽々と壁を飛び越え、アメリカ人から絶大な支持を得ています。さらには世界中で。
近藤 なぜここまで、ということで言えば、社会的な背景もあるでしょう。歴史的には「産業革命以降」という表現になるのですが、モノがたくさん作られ、私たちはモノをたくさん所有することによって、より豊かに、幸せになっていく、という価値観を当たり前としてきました。けれど、それが飽和状態に達してしまった。幸せになりたくてモノを買い、持っていたはずなのに、過剰になったモノの管理に押し潰され、時間に追われるようになってしまったんですね。
川村 モノを持つことで、逆に苦しむことになった……。
近藤 だけど、どうしていいかわからない。解決策を言葉で説いたものがあまりなかったところに、私の提唱する「片づけをしましょう」「ときめくモノだけを選びましょう」という価値観が登場したのですね。具体的なメソッドもある。というのが、日本に限らず世界でも受け入れられた根本的な理由だと思います。
川村 そうしたなかで、たとえばアメリカと日本とで、違いはないのですか?
近藤 明らかな違いが、一つあります。モノに対し感謝する感覚です。私は依頼人に「『今までありがとう』と、モノにお礼を言って手放しましょうね」とお伝えします。日本では、「そうですね」ですんなり進むのですが、アメリカでは、「どうして?」という質問がいつも返ってくる。
モノとの主従関係がハッキリしているというか、「管理してるのは私なんだから」という意識がすごくあるのでしょうね。そこで、なぜモノに感謝するかを説明する、というステップが必要になるのです。