「片づけというものをどうやって世の中に伝えられるだろう、と常に考えている私にとって、小説という手法はとても新しく感じられたし、これまで片づけに関心のなかった方にも届くのでは、という期待もありました」(近藤さん)

1000の部屋をパッチワークのように

川村 僕は片づけが苦手で……。映画を作ったり、小説を書くというのは、有象無象を頭の中や、自分の部屋にため込んで、そこから、「どういう組み合わせがあるんだろう」というふうに考える仕事だったりもします。

近藤 わかる気がします。

川村 なので、とにかくモノがたまりがち。ところが考えてみると、料理、洗濯、掃除の仕方は教えてもらっても、片づけをちゃんと教えてもらったことがないんです。そこに、具体的な方法を教えてくれる人があらわれた。しかも、片づけと人生の幸せはリンクしているという。実際にお話しさせていただくうちに、片づけにも、近藤麻理恵という人物にも、どんどん興味がわいてきたんです。

近藤 そう言っていただくと嬉しいです。

川村 ロサンゼルスから帰って『読売新聞』から「連載小説を」と依頼されたのは、コロナ禍のさなかにあって、家を出られなくなる時間が増えていた頃でした。部屋を眺めてみると、そこは自分の歴史そのもの。どういうモノを好きで、何が捨てられないか、というのが全部、部屋の中にある。このとき、「片づけ」というテーマはエンタテインメントになりうる、と考えました。それで、近藤さんに参加をお願いし、対話を重ねながら物語をつくっていく、という企画がスタートしたのです。

近藤 このお誘いに、本当にときめきました。それまで片づけについて、いろいろな形でみなさんにお伝えしてきました。実用的な書籍もそうですし、アメリカでは、さまざまなお宅を訪問して片づけのお手伝いをするリアルな現場を、番組として視聴者に観ていただいています。それを、今度は物語として描く――。
片づけというものをどうやって世の中に伝えられるだろう、と常に考えている私にとって、小説という手法はとても新しく感じられたし、これまで片づけに関心のなかった方にも届くのでは、という期待もありました。