肝炎ウイルスの発見は困難を極めた

『肝臓のはなし-基礎知識から病への対処まで』(著:竹原徹郎/中公新書)

1947年、流行性の肝炎を「A型肝炎」、血清肝炎を「B型肝炎」と整理することが提唱され、これが一般に受け入れられるようになります。また、細菌を通さないフィルターで濾過しても感染性があることから、この感染がウイルスによって媒介されるものであることも、広く理解されるようになりました。

同時期に、医学はウイルスを特定し対策を講じる「ウイルスハンティング」の時代に入ります。ウイルスを特定するためには、まず感染試料を準備する、そしてそれを電子顕微鏡で観察するということになります。しかし、この最初の試料というのが重要で、そもそもそこにウイルスが大量に存在しないと見つけることができません。

そこで、通常はウイルスを動物に接種したり、あるいは雄精鶏卵の漿膜に感染させて増殖させたり、あるいは培養細胞で増やしたりします。そしてさらにこれを超高速回転(超遠心)で濃縮し、とにかくウイルス量の多い試料をつくります。

しかし、肝炎ウイルスの場合、ここで大きな問題が生じました。肝炎ウイルスは、通常の方法で増やすことができなかったのです。20世紀になって数々のウイルスが病原体として特定されていく中で、肝炎ウイルスの発見は困難を極めました。