A・D・E型肝炎ウイルスの発見

B型肝炎ウイルスの発見に引き続き、1973年に流行性肝炎の原因ウイルスとして発見されたのが、A型肝炎ウイルス(HAV)です。A型肝炎ウイルスの発見は、NIHのボブ・パーセルの研究室で働いていた博士研究員スティーヴン・ファインストンによってなされました。当時の彼は医学部を卒業したばかりで、公衆衛生にかかわる研究活動を志望した動機は、ベトナム戦争の兵役免除のためでした。

パーセルの指示で、ファインストンはA型肝炎患者の糞便の中からウイルスを電子顕微鏡で観察する研究に没頭しました。米国の国防省は、監獄に収容されていた囚人たちからボランティアを募り、A型肝炎の糞便のストックを研究用に保持していました。

ファインストンはこの大量の糞便を水に溶かして、その濾過液を試料に、昼夜を問わず、電子顕微鏡による観察を続けました。そして2年後、ようやくウイルスの特定に成功します。

これで、2種類の肝炎ウイルスが判明し、肝炎の問題は解決されたかに思われました。しかしその2年後、A型でもB型でもない輸血後の肝炎が、多数発生していることが明らかになったのです。これ以降、A型でもB型でもない肝炎の原因ウイルス探しが血眼になって行われるようになりました。

こうした過程で発見されたのが、D型肝炎ウイルス(HDV)とE型肝炎ウイルス(HEV)です。D型肝炎ウイルスは極めて特異なウイルスで、B型肝炎に感染している状況においてのみ、感染性ウイルスをつくりだせる、いわゆる「欠損ウイルス」です。そして、E型肝炎ウイルスは、A型肝炎ウイルスと同じく、経口感染で広がるウイルスでした。