もっと遠くの自然豊かな海へ行ってみたい。いっそ道具も揃えてしまおう。こうして、日本海まで遠征するようになった。朝イチの釣り場入りを目指し、午前3時起床、4時出発。晩酌の酒を切らすと機嫌が悪くなるほどの私が、前夜は潔く断酒。熟睡できるよう、日中にしっかり身体を動かすようになった。
行けば、キス、ガシラ(カサゴ)、カワハギなどが釣れる。包丁をこまめに研ぎ、魚専用のまな板まで購入。刺身、煮付、塩焼き、唐揚げ、あら汁……わが家の週末は魚料理と決まった。
しばらくはそれで満足していたが、岸からでは大物が釣れない。沖に出るべきか。釣り船に乗る手もあるが、いったん乗ったら朝から晩までの長丁場だし、乗り合い船は子連れでは参加しづらい。だったら自分で小さい船を操縦しよう。ごく自然に思いついた。2級小型船舶操縦士免許取得、3日間のコース。車で通える距離だったが、「泊まりがけで行けば?」との夫の優しい一言で決行した。
実技講習に大苦戦しつつも、どうにかこうにか免許を取得。早速ボートを借りて、家族でいざ海へ! 鯛や平目が舞い踊り、待望の大物をゲット……のはずが、順風満帆とはいかない。悶々としているうちに冬がやってきた。
海が荒れやすい季節だ。雪や道路の凍結で、日本海側に出ることもできなくなり、釣り自体いったん休み。私はあっけなく、ペーパードライバーになった。
海に行けば、ほかの釣り人との交流も楽しい
冬を越したが釣り熱は冷めず、私にとって2度目の釣りシーズン到来。やはり大物を狙いたい。夫や子どもはルアー(擬似餌)での釣りを始めたが、私は本物の餌にこだわりがある。そこで、柄杓で餌を撒きつつ、長い竿で釣る「フカセ釣り」に挑戦。狙うのは、チヌ(クロダイ)だ。新品の竿で臨んだが、数回は成果なし。
次は、家で仕事をするという夫と若干釣り熱が冷めつつある子どもを残し、ひとりで日本海へ向かった。釣りはひとりでできるところが性に合っている。海に行けば、ほかの釣り人との交流も楽しい。純粋に趣味を通じての交流だから、社会的立場や個人的背景など余計なことを考えなくていいのが楽だ。