ある日、隣にスゴ腕がいた。釣り方は私と同じフカセで、きっかり20分ごとに釣り上げる勇姿を羨望の眼差しで眺めつつ、1匹も釣れない私はしょんぼり。その方は親切にチヌを分けてくださり、釣り方の改善方法も教えてくださった。もう帰るからと自分の針も譲ってくださり、感激しきり。「絶対釣れるよ」という太鼓判むなしく、その日は結局ボウズ(一匹も釣れないこと)。ただ、リアル師匠との一期一会で、私は覚醒した。
再び家族と一緒に同じ釣り場へ。ひとつひとつの動作を、前回教わった通りに、丁寧にやってみる。なかなか釣れなくても、めげなかった。見知らぬ方が「がんばってください」と餌の残りをくださった。残り物には福がある。餌が尽きようとする直前、確かな手応えあり。濃紺の海からバシャバシャと浮かび出た、まぶしいばかりの銀色。本命のチヌだった。
万感の思いが押し寄せ、目がうるむ。必死で耐えていたが、網を手に走ってきた夫の「泣くなよ」で涙腺決壊。「初めて釣れたー! うれしいー!」とうれし泣きに泣いた。その後も場所を変えつつ、チヌを追い続ける。この魚は厳冬期でも狙えるのが魅力だ。釣り2年目の私にシーズンオフの概念はない。今年1月には雪がちらつくなか、47センチの大物を釣り上げた。
最近、釣具屋さんで「小型船舶ペーパードライバー講習」のチラシを見つけた。春になったら問い合わせてみようと思う。