一人キャンプやグランピングなど、近年のアウトドアレジャーは多様化し、ますます人気が高まっています。コロナ禍でも、屋内レジャーが制限されたことを受け、売り上げは落ちることなく、市場が拡大。この傾向は世界的にも起こっており、急速なデジタル化の普及により、自然回帰の流れが起こっていると考えられています。新井美智代さん(仮名・奈良県・主婦・51歳)の場合は、コロナによる休校でゲーム漬けになりそうな子どもをなんとかしようと、釣りに連れて行ったところ、自分が面白さにハマってしまったそう。大人だって、未知なる世界に挑戦するときは心躍るもの。新井さんの成功体験とは……
銀色の小さな魚が跳ねている
「釣りをしてみたい!」。以前から小学生の子どもにせがまれていたが、夫も私も釣りの経験はほぼなく、道具もない。近くに海もないから、せがまれるたび生返事でごまかしていた。ところがコロナ禍で、学校が休校に。毎日家でゲームばかりさせているのもいかがなものか。
そんなある日、ゲームの中で釣りをしていた子どもがつぶやいた。「本当の釣りがしたい」。さすがに考えざるをえなかった。調べてみると、車で1時間ほどの海辺にファミリー向けの釣り公園がある。現地で道具一式レンタルできるというので、試しに行ってみることにした。
スタッフが懇切丁寧に、「魚を持って帰る箱も売っていますよ」と教えてくれる。「釣れるかどうかわかりませんし」と返すと、「絶対釣れますから!」。苦笑しつつも、小さめのものを買い求め、釣り場へ。
仕掛けの小さなカゴに餌を入れ、海に投入して待つこと数分。「!」。竿を持つ手に、独特の感触が走った。糸を巻いてみると、銀色の小さな魚が跳ねている。鰺だった。季節は夏、よく釣れる時季だ。家族3人で釣って、箱はあっという間に満杯に。小鰺、小鯖、サッパ──釣った魚は、フライや酢締めにして美味しく食べた。
この出来事を機に、家族で釣りに夢中になった。ユーチューブで解説動画を見たり、スタッフや釣り客に教えてもらったりして勉強。サヨリをたくさん釣ったときは、長年の恨みを晴らすことができてスカッとしたものだ。
かつて都心に暮らしていた頃、店で売っているサヨリが高すぎて、1匹しか買えなかった苦い経験がある。それが、どうだ。江戸の仇は大阪湾で討つ。もちろん刺身にしてやった。腹一杯のサヨリ。満足、満足。