イラスト:seesaw.
生きがいのあるとなしとでは、日々の生活のハリが違うもの。50代で「推しメン」を見つけた森本さん(仮名)は、氷川くん三昧20年ののち、定年を迎えることに。時間はできるが収入はなくなる状況に、彼女が選んだ方法は。先立つものへの不安はあるけれど、悔いなく生きるために《好き》を優先したっていいじゃない!

ファンクラブに入りたい!がきっかけで

いままでもこれからも、私の生きる希望は演歌歌手の氷川きよしくんだ。出会いは20年ほど前のこと。まだ50代だった私は、会社員として働いていた。ある日、後輩の女性から「好きな歌手のコンサートが東京であるので、休暇をとってもよいか」と耳打ちされ、「どうぞどうぞ」と快く了解したと記憶している。

その話の流れで、「好きな歌手がいるなら、ファンクラブに入ったほうが絶対にいいですよ。チケットが手に入りやすいし、会報誌で優先的に情報を知ることができるからオススメです」と教えてもらった。「ファンクラブ」という存在を知らなかった私には、後輩の話がとても魅力的に思えた。

「とにかく誰かのファンクラブに入りたい!」。それならばと、テレビで観て「イケメンだな」と思っていた氷川くんに決めたのだった。

入会してからというもの、不思議なことに氷川くんへの親しみが日に日に増し、テレビの歌番組が待ち遠しくてたまらない。またラッキーなことに、その年は私の住む県内でコンサートが予定されていた。デビューして間もない頃ということもあり、チケットを入手できたものの、そもそも私はコンサートへ行くこと自体が初体験。当日は早めに会場に向かうことにした。