旅支度から応援グッズまでの大荷物を、着物姿で運ぶことの大変さを感じながら会場に到着。けれど公演が始まれば、そんなことは苦労でもなんでもない。この日のために重ねてきた氷川くんの努力を思うと感極まり、人目も気にせず泣いたり笑ったりする私。さらには、大声で歌いながらペンライトを大きく振った。
こんな姿を友人が見たら、さぞかしびっくりするだろう。どこまでも伸びる歌声、天然キャラ、溢れ出る優しさ、恵まれたルックス。なにごとにも一所懸命な氷川くんの魅力にのめり込むにつれ、コンサートに行くだけでは熱い気持ちが抑えられない状況になっていた。なにか氷川くんのためにできることはないか……。
そういえば、氷川くんの曲中にはたびたび和楽器の演奏が流れる。もし私が和楽器を演奏できたなら、近県でコンサートが開催された時にお手伝いとして声がかかるかもしれない。そう思いついたらいても立ってもいられず、カルチャースクールの琴講座に通い始めることにした。
そんなふうに氷川くん三昧の日々を送っていたら、あっという間に定年の60歳になっていた。時間はできるが、収入がなくなる。でも会いたい。いったいどうすれば……と頭を悩ませていたら、近県で開催される『NHKのど自慢』に氷川くんがゲスト出演するという。「これなら、同じ舞台に立てる!」と、出場と観覧の両方にエントリーした。
あとで知ったのだが、出場できるのは開催される地域に住む人だけだとか。結果、予選会には出場できなかったが、観覧は叶った。同じ舞台に立ちたい気持ちはいまも変わらず、県内で開催される時には応募し続けている。これまでに2度ほど予選会に出場するも、残念ながら本選には進めていない。もちろん歌うのは氷川くんの曲だ。
ファン歴20年を超えた現在、年金生活者の私は、コンサートを少しずつセーブせざるをえない状況にある。そのうえ、新型コロナウイルスの出現でそもそもコンサートの開催が難しい日常になってしまった。
こんな不安な日々にこそ氷川くんの存在が必要なのだが、元気でいればまた会える日がくる。来るチャンスのため、お琴の練習に励む毎日を送っている。