(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、今年で107年の歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第20回は「日常生活でタカラジェンヌに遭遇したら…」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)

完全に油断しました・・・

「もしかして…越乃さんですか!?」
(え!? ウソ…ヤバ!!)

「あー、そうみたいですねぇ…あははははぁ…」

場所はスーパー。
近いから、まぁ~いっか、となかなかひどい状態で出掛けたときに限って
声をかけられるという…
髪も顔もひどい…
あ、服も…
大後悔です。

宝塚では常に見られる立場でした。
舞台を降りてもプライベートでもやはり見られる立場でした。
それが当たり前な日々になっていました。
見られているかもしれないという自意識過剰精神で生きていました。

宝塚を退団したとき、宝塚という大きな看板を下ろし、
少し自由になったような気がしました。
服装は自由だし、これからは何をしても構わない。
でも、そう思ったのはほんの短い時間でした。

今の自分があるのは宝塚にいたから。
だから、更にその看板に恥じないように生きていかなくてはいけないと、
下ろしたはずの看板が、今の自分を律してくれています。
そこにしがみつくのではなく、敬意を表して生きていきたいと。

とはいえこの失態。
完全に油断しました…。